イベントの制作会社とは?仕事内容・向いている人を紹介

イベントを開催するにあたり、パンフレットやポスター、ステージ装飾、映像演出といった制作物全般を手がける会社は「制作会社」と呼ばれ、イベントの世界観を形にする重要な役割を担います。

本記事では、イベントに関わる制作会社に焦点を当てて、仕事内容、働くメリット、向いている人についてお伝えします。また、近年の制作物のトレンドについても紹介します。

イベントに関わる制作会社とは

企業や団体が開催するイベントには、展示会、セミナー、プロモーションイベント、社内イベントなど、さまざまな種類がありますが、どのようなイベントであっても、パンフレットやポスター、映像コンテンツ、装飾物などの制作物が必要になります。

イベント会社のなかには、企画立案から制作、当日の運営までをワンストップで請け負う「企画運営会社」もありますが、一方で、デザインや映像編集、印刷物の制作、デジタルコンテンツ開発などの制作物に特化した会社もあります。本記事では、イベントに関わる制作物に特化した会社について詳しく解説します。

イベントに関わる制作会社の仕事内容

イベントに関わる制作会社ではどのような制作を行うのでしょうか。レイアウトや装飾に関するものから、イベントで使用するアイテムまで紹介します。

会場装飾

制作会社では、イベントのコンセプトや世界観に合わせて、ステージやブースのデザイン、看板、サインなどの装飾の施工を行います。たとえば、企業イベントや展示会では、ブランドのイメージに合わせたブースデザインが求められ、参加者の印象に残る空間を作ることが重要です。

このように、イベントの目的やコンセプトに応じてデザインを形にしていく過程では、設営に必要な素材選定や構造の設計もおこないます。

会場装飾を専門とする会社は「空間デザイン会社」「ブース装飾・施工会社」などとも呼ばれます。

映像・音響・照明

映像・音響・照明は、イベントの雰囲気や演出効果を高めるうえで重要な要素です。それぞれ「映像会社」「音響会社」「舞台(イベント)照明会社」といった専門の会社も存在します。

映像

大型スクリーンやLEDビジョンの設置をはじめ、イベントの進行に合わせた映像コンテンツの投影・切り替えをおこないます。

音響

イベントの規模に合わせて、会場の広さや反響を考慮して観客全体にクリアな音が届くようスピーカーの配置や音量バランスを調整します。特に、コンサートやライブイベントにおいては音響調整が非常に重要な役割を果たし、演奏やパフォーマンスの迫力を引き出し、感動を届ける役割を担います。

照明

イベントのステージやブースを目立たせたり、演出にメリハリをつけたりするために、光の色や動きを細かく制御します。照明の仕事は会場全体の雰囲気を作るだけでなく、来場者の視線を誘導し、イベントの流れを分かりやすく伝える役割もあります。

特別な演出

映像や音響、照明のほか、イベントのテーマや目的に沿った空間を作り出すために、特殊な演出を取り入れる場合もあります。

例えば、スモークを取り入れた演出や、プロジェクションマッピングを活用した演出、音と光を連動させた照明演出や、観客が操作できるインタラクティブな仕掛けなどを活用することで、没入感や感動を高めることができます。さらに、大規模なイベントでは、花火による演出も組み合わせ、視覚的なインパクトを強調することもあります。

これらの演出は、安全管理や法律規制を遵守する必要があり、高度な技術と管理のもとで行う必要があるため、専門的なノウハウが必要です。

ノベルティやパンフレットの制作

ノベルティやパンフレットといった配布物は、イベントの認知拡大や来場者への情報提供を目的に企画・制作され、「デザイン会社」や「印刷会社」といった専門会社が担うことが一般的です。

ノベルティは、企業やブランドのロゴを入れたボールペンやエコバッグなどが一般的ですが、ターゲットやイベントのテーマに合わせた企画が求められます。パンフレットは、イベントの概要やスケジュール、出展企業・商品の紹介などを掲載し、来場者がスムーズにイベントを楽しめるよう設計する必要があります。そのため、デザインやレイアウトの工夫だけでなく、紙質や印刷方法の選定など、細部までこだわりが求められます。

また、近年では、紙の配布を減らしつつ、スマートフォンやタブレットで手軽に閲覧できる「デジタルパンフレット」や、来場者が商品情報やキャンペーンページに簡単にアクセスできる「QRコード付きのノベルティ」なども増えています。このように、オンラインとオフラインを組み合わせてイベント後も継続的に情報を届ける工夫も取り入れるケースがあります。

グッズ・オリジナルアイテムの企画制作

グッズやオリジナルアイテムは、無料配布するノベルティとは異なり、販売を目的に企画・制作されます。イベントを主催する企業のブランド力を高めたり、来場者の満足度を向上させたりするために重要です。音楽フェスではアーティストコラボTシャツやリストバンド、スポーツイベントではチームの公式グッズや応援グッズがその一例です。また、アニメ・ゲーム関連のイベントでは、キャラクターグッズやフィギュアなど、ファン向けのアイテムを手掛けることもあります。

いずれも、デザインだけでなく素材選定や製造工程の管理が重要で、短期間で大量に生産する場合には製造工場との交渉や連携が大切です。

配信における技術的なサポート

配信をともなうイベントにおいては、視聴者に快適に視聴してもらうための細やかな調整が求められます。必要な機材の準備や操作、映像・音声の調整、カメラの選定・設置、配信ソフトウェアの設定、インターネット環境の整備などが主な仕事内容です。

また、登壇者の映像・音声の品質管理や、配信トラブルへの迅速な対応も重要になります。配信中に「チャット機能」や「投票機能」を活用して視聴者と配信者が交流できる仕組みを作ったり、インタラクションを高める仕組みを検討することも業務の一環です。

イベント用アプリ・システム開発

イベントの運営をスムーズにし、来場者の利便性を高めるために、専用のアプリや、デジタルを活用したシステムが導入されるケースが増えており、それらを開発・導入する専門会社もあります。

電子チケットによる入場管理や、会場内のナビゲーション機能などがその一例です。近年では、来場者ごとに発行されるデジタルIDを用いたチェックインシステムなど、個人情報を安全に管理しつつ、手続きの簡略化を実現する技術も活用されています。このようなシステムの開発・導入は、イベントの利便性を高め、より快適な体験を提供するうえで重要です。

謎解きやゲームコンテンツの制作

ウォークラリーや脱出ゲーム、宝探しといった、謎解きイベントで使用されるコンテンツや、ゲームコンテンツの制作を担う専門会社もあります。

参加者に熱中してもらえるようなコンテンツにするには、謎やゲーム自体の完成度だけでなく、解答解説の作り方やその示し方、全体の時間配分や、ルート、問題の構成も重要です。また、商業施設やテーマパーク向けのイベントであれば、周遊してもらえるようなルートを考慮する必要があり、企業の社内イベント向けの謎解きイベントであれば、その企業に絡めたオリジナルの問題を作成するなど、クライアントの目的に応じたコンテンツを制作します。

イベントに関わる制作会社で働くメリット

イベントに関わる制作会社は、デザインや映像、印刷物、デジタルコンテンツなどを通じてイベントの成功を支える仕事であり、専門スキルの習得や創造性の発揮ができる点が大きな魅力です。

ここでは、制作会社で働くメリットについて詳しく紹介します。

専門スキルを磨ける

制作物に特化した会社では、グラフィックデザイン、映像編集、印刷技術、デジタルコンテンツ制作など、専門的なスキルが必要です。実務を通じて制作フローを学びながら、自分の得意な分野の技術を習得し、磨くことができます。

また、クライアントの要望に合わせて調整する経験を積むことで、幅広い案件に対応できるスキルが身につきます。

創造力を活かせる

制作物の企画からデザイン、制作までの過程で、自分のアイデアを反映させる機会が豊富にあります。特に、イベントのテーマやブランドイメージに沿ったビジュアルを作成する過程で、イベントの雰囲気を大きく左右する役割を担えるため、クリエイティブな仕事をしたい人にとって大きなやりがいがあるでしょう。

多様なプロジェクトへ参加できる

一般参加者向けのイベント、企業のプロモーションイベント、展示会、社内イベント、自治体主催のフェスティバルなど、関わるイベントの種類によって、制作物の種類やジャンルは多岐にわたります。業界ごとにデザインや演出のトレンドも異なるため、さまざまなイベントに携わりながら、幅広い経験を積めるのが魅力です。短期間で多くのプロジェクトをこなすことで、対応できる制作の幅が広がります。

チームで協力できる

制作物の完成には、デザイナー、ライター、映像クリエイター、エンジニア、印刷業者など、多くの関係者との協力が欠かせません。コンセプトを共有し、各分野の専門知識を集結させて一つのイベントを作り上げる過程でチームワークが求められるため、コミュニケーション力や調整力も磨かれます。

成果や達成感が大きい

自分が関わった制作物が、実際のイベントで使用され、多くの人の目に触れるのは大きな喜びになるでしょう。とくに、来場者の反応を直接見ることができるイベントでは、自分の仕事が与える影響を実感しやすく、大きな達成感を得られます。また、成功したイベントの制作物は実績として残り、次の案件に活かすことができます。

イベントの制作会社に向いている人

イベントに関わる仕事の中でも、制作に関わる仕事はどのような人に向いているのでしょうか。

ものづくりが好きな人

制作物に特化した会社では、ポスターやパンフレット、映像コンテンツ、デジタルサイネージなど、さまざまな制作を担当します。ものづくりが好きで、デザインや編集作業を通じて、自分のアイデアを形にすることが好きな人に向いています。

細かい作業や調整が得意な人

印刷物のレイアウト調整、映像の編集、ブース装飾のデザインなど、制作物には細かい作業が求められます。誤差が許されない作業でも苦痛にならない人、細部にこだわることができる人には向いているでしょう。

企画の意図を考えるのが得意な人

クライアントの要望に沿って具体的な制作物に落とし込むためには、クライアントの目的や意図を的確に把握する力が必要です。指示されたことを単にこなすだけではなく、目的を理解し、より良い提案ができる人に向いています。

最新の技術やトレンドを学ぶのが好きな人

デジタルサイネージやAR・VRなど、イベントの制作物に最新技術が取り入れられるケースが増えています。新しいデザイン手法や表現技術に興味を持ち、常に学び続ける意欲がある人は、より幅広い案件に携われるでしょう。

チームでの協業が好きな人

制作物のクオリティを高めるには、クライアントはもちろん、デザイナー、ライター、映像編集者など、多くのクリエイターと連携することが必要です。チームで協力しながら作業を進めることが得意な人は向いているでしょう。

スケジュール管理ができる人

イベントの制作物には納期があり、必ず期日までに完成させる必要があります。スケジュールを意識しながら、効率的に作業を進めることができる人は、制作の現場で信頼される存在になるでしょう。

近年の制作物のトレンド

イベントでは、参加者の関心を集め、満足度を高めるために、トレンドに合わせた制作物が活用されています。最後に、制作において近年注目されているトレンドを紹介します。

デジタル技術を活用した表現

タブレットやスマートフォンをかざすと追加の情報や映像が表示されるポスターやパンフレット、映像やアニメーションが変化する電子ディスプレイなどが増えています。デジタル技術を活用した視覚的な驚きや動きのある演出を取り入れることで、参加者の印象に残りやすく、イベントの魅力やメッセージを効果的に伝えられます。

環境負荷を抑えたコンテンツ

再生紙を使用したパンフレットや、必要な情報をスマートフォンで確認できるデジタルパンフレットの提供、また、リユース可能な素材で作られた看板や装飾がイベントで活用されることが増えています。SDGsをはじめとした環境への関心の高まりを踏まえて、環境負荷の低減を実現したイベント運営が注目されています。

インタラクティブなコンテンツ

イベントの案内や情報提供を一方的に行うのではなく、参加者が画面を操作して選択肢を選んだり、QRコードを読み取って追加コンテンツを楽しんだりできるインタラクティブな仕掛けも近年のトレンドです。インタラクティブなコンテンツをうまく活用できれば、参加者の理解を深めやすくなり、体験を向上させることができます。

SNSでの拡散効果のあるツール

イベント会場内に撮影スポットを設置して写真をSNSに投稿してもらう仕掛けや、特定のハッシュタグをつけて投稿すると特典が得られるキャンペーンなどが増えていることから、制作会社が撮影スポット用の装飾を手掛ける機会も増えています。これらの仕掛けは、SNSの拡散効果により、イベントの認知拡大が期待できます。

短尺・縦型の動画

スマートフォンが視聴の手段として主流となる中、イベントのプロモーションでも短尺(15秒〜1分)かつ縦型の動画が活用されるケースが増えています。TikTokやInstagramのリール動画など、SNSプラットフォーム向けに最適化された動画は、事前告知だけでなく、イベント当日の拡散効果も期待できます。動画に関わる制作会社では、短尺・縦型の動画を活用する機会が増えると考えられます。

AIを活用したデザイン・コンテンツ

イベントの制作物にもAIの活用が進んでいます。デザイン支援ツールを使ったポスターやパンフレットの制作、AIを活用した映像編集、さらにはリアルタイムでのテキスト生成を活用したイベント演出など、クリエイティブ分野でのAI導入が加速しています。

完全にAIに任せるのではなく、AIを補助ツールとして活用することで、短期間でオリジナリティの高い高品質なコンテンツを制作することが可能になりつつあります。

まとめ

イベントに関わる制作会社では、会社ごとに得意分野が異なり、映像・音響や装飾などの制作に特化する会社もあれば、企画から制作も含めて全体を手掛ける会社もあります。

紹介してきた通り、イベント制作に関わる仕事は多岐にわたり、細かい調整やチームワークが求められる場面も多いものの、その分やりがいも大きい仕事です。本記事の内容を参考に、制作会社の仕事について理解を深め、自分に合った働き方を考えてみてはいかがでしょうか。

関連記事

イベントの仕事は
毎月文化祭・運動会が複数あるようなもの。
常にマルチタスク、常に戦場。常にお祭り
それがイベント業界です。でもその分、お客様の笑顔を目の前で見られる最高の仕事でもあります。
経験はないけれどイベント業界に興味がある、イベントライフはそんなあなたに役立つ情報をお届けします。