イベント業界とは?市場規模や職種、課題と将来性について解説

イベント業界は、華やかな演出や大規模な集客を通じて、参加者に感動や新しい体験を提供します。コンサートや展示会、スポーツイベントから企業のプロモーションまで、活躍の場は多岐にわたります。
転職先としてイベント業界を考える際には、その華やかさだけでなく、企画から運営、マーケティングまで、さまざまな専門性が求められる業界であることや、業界がもつ課題と将来性について知ることが重要です。
本記事では、イベント業界とはなにか、イベント業界の市場規模、職種、働きがい、イベント業界の課題と将来性について解説します。
イベント業界とは
イベント業界とは、音楽やスポーツ、展示会など多様なイベントの企画・制作・運営を通じて、参加者の交流や体験を創出する産業のことです。
イベント会社や広告代理店が中心となり、音響、照明、警備、清掃などを専門とする会社とも連携をします。
なお、イベント会社とは、イベント業界を構成する一部であり、主にクライアントから依頼を受けてイベントを企画・運営する企業を指します。一方、イベント業界は、これらの企業を含む広範な産業全体を指します。
イベントによっては地域活性化や観光産業の振興、文化交流の促進など、社会的・経済的に大きな影響を与えることもあります。また、イベント開催によって、イベントを支える人員の雇用機会を生み出し、宿泊業や飲食業、交通業といった周辺産業への波及効果もあります。
イベント業界の種類
イベント業界が扱うジャンルは、音楽コンサートやスポーツイベントから、ビジネスセミナー、地域のお祭り、国際展示会まで多岐にわたります。扱うイベントのターゲットにより「B to C」と「B to B」に分かれ、規模や目的に応じて、関わる企業や人材の種類も異なります。
以下は、「B to C」と「B to B」のイベントの例です。
B to C(一般消費者が対象)のイベントの例
- ライブイベント……音楽コンサート、フェス、アーティストのライブイベントなどの企画運営
- スポーツイベント……スポーツの試合や競技会、マラソン大会などの運営
- エンタメイベント……キャラクターショー、ゲーム関連イベント、映画上映会などの運営
- 地域振興イベント……地域の祭り、花火大会、インバウンドイベント、観光イベントの企画運営
- 展示・体験型イベント……一般向けの展覧会、博覧会、体験型アクティビティの企画運営
B to B(企業が対象で、PRやマーケティングなどの一環として活用される)のイベントの例
- 展示会・見本市……業界の展示会や見本市、トレードショーを企画運営
- 企業イベント……新商品発表会、記者会見、株主総会、社員総会、表彰式などを企画
- 研修・セミナー……企業向けの研修会やセミナー、ワークショップを企画
- 社内イベント……社内運動会や、社内レクリエーションなどを企画
イベント業界の市場規模
イベント業界は、コロナ禍を経て大きな変化を遂げつつも、現在は活発な市場として注目されています。2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で多くのイベントが中止や縮小を余儀なくされましたが、オンラインイベントの普及により、新たな形で需要を維持してきました。
2023年以降、感染症対策の緩和に伴い、オフラインイベントの開催が再び盛んになり、ライブイベントや展示会、地域のお祭りなど、多様なジャンルのイベントが復活しています。とくに、直接的な体験や交流を重視するリアルイベントでは、参加者の熱気が戻りつつあります。
一方で、オンラインイベントの需要もなくなったわけではなく、時間や距離の制約を気にせず参加できるため、利用する層が一定以上存在しています。
コロナ禍での試行錯誤を経た結果、オフラインとオンラインの両方が市場に選択肢として共存しており、イベント業界は柔軟性と多様性をもつ市場として発展しているといえるでしょう。
イベント業界の職種
イベント業界には多種多様な職種があります。以下では、4つのカテゴリに職種を分け、それぞれを紹介します。
企画・プロデュース職
イベントの成功は、企画段階での綿密なプランニングにかかっています。企画・プロデュース職では、クライアントのニーズを踏まえたコンセプト設計や予算管理、スケジュール調整を行います。また、ターゲット層に応じた集客戦略や演出アイデアを提案することも重要です。
【該当職種例】
イベントプランナー | イベントの全体像を設計し、クライアントのニーズを反映した企画書を作成する。コンセプト設計や予算配分、スケジュール作成を担当する。 |
イベントプロデューサー | 企画段階から運営全般を統括し、プロジェクトの成功に向けた指揮を執る。クライアントとの調整や関係者の統括も行い、全体の進行を管理する。 |
プロジェクトマネージャー | 実務面の責任者として、各チームの進捗管理やタスク分配を担当する。予算内で効率よくプロジェクトを進め、目標達成をサポートする。 |
企画・プロデュース職に向いている人
企画・プロデュース職に向いているのは、計画性と柔軟性を兼ね備えた人です。クライアントの要望を的確に理解し、アイデアを形にする創造力が求められます。また、複数のタスクを同時に進行する能力や、関係者間の調整力も欠かせません。
さらに、プレッシャーの多い環境でも落ち着いて対応する力と、チーム全体をまとめるリーダーシップも必要とされます。
一方で、失敗を恐れず挑戦する姿勢や、トレンドを敏感にキャッチする姿勢もこの職種に適した特性といえるでしょう。自分の提案が実現し、多くの人に喜ばれる達成感を味わいたい人に向いている職種です。
制作職
イベントの形を具体化するのが制作職です。会場の設営、音響や照明のセッティング、映像演出など、技術的な作業が中心となります。デザインや施工管理も含まれ、現場でのスムーズな進行を支える役割を担います。
【該当職種例】
音響 | イベントで使用する音響機材の設置や調整を担当し、イベントに適した音質を提供する。 |
照明技術者 | 照明機材の設置や演出を担当し、イベントを盛り上げる照明の調整を行う。 |
施工管理者 | 会場設営の進行を管理し、施工スケジュールの調整や安全確認を担当する。 |
グラフィックデザイナー | イベントのビジュアルデザインを担当し、ポスターやパンフレット、ステージ装飾の制作をサポートする。ブランドイメージの表現にも携わる。 |
制作職に向いている人
制作職種に向いているのは、専門的なスキルを磨く意欲をもち、技術やデザインに対する高い関心と実践力をもつ人です。また、現場の状況に応じた柔軟な対応力や、細部まで注意を払う几帳面さも重要です。
さらに、他のスタッフと円滑にコミュニケーションを取れる協調性、限られた時間内でスムーズに作業を進めるため、計画性や効率的な姿勢も求められます。
自分が手掛けた音響や照明、デザインがイベントの雰囲気や感動を生み出す瞬間に達成感を得られる人に向いているでしょう。
運営職
イベント当日の現場運営を支えるのが運営職です。スタッフの配置や進行管理、トラブル対応など、イベントが予定通りに進行するように管理します。運営には警備や清掃、受付なども含まれます。
【該当職種例】
イベントディレクター | イベント全体の運営を指揮し、スタッフの配置や進行スケジュールの管理、緊急時の対応策を指導する。 |
運営スタッフ | 受付や誘導、会場内の案内など、イベント参加者がスムーズに楽しめるように現場でサポートする。 |
警備員 | 会場内外の安全を確保し、不審者や危険物のチェック、緊急時の避難誘導を行う。 |
運営職に向いている人
運営職種には、現場での臨機応変な対応力や高いコミュニケーション能力が求められます。イベント当日は予想外のトラブルが発生することも多いため、落ち着いて状況を判断し、迅速に対処する力が重要です。
また、多くのスタッフや関係者と連携しながら業務を進めるため、協調性やリーダーシップも必要とされます。
参加者の満足度を高めるための細やかな気配りやサービス精神をもつ人が活躍しやすい分野です。
マーケティング・集客職
イベントの成功には、集客のための広報活動も欠かせません。マーケティング・集客職では、広告の選定やSNS運用、チケット販売戦略などを担当します。イベントの認知度を高め、参加者を増やすための工夫が求められます。
【該当職種例】
広告プランナー | イベントのコンセプトやターゲット層にもとづき、効果的な広告キャンペーンを企画・実施する。 |
SNSマーケター | SNSを活用した投稿や広告運用を通じて、イベントの情報発信や参加者とのコミュニケーションを行う。 |
チケット販売担当者 | 販売チャネルの選定や価格設定、プロモーション活動を通じて、チケットの売上目標を達成する。 |
マーケティング・集客職に向いている人
マーケティング・集客職では、情報発信力やデータ分析のスキルが求められます。広告やSNSの効果を測定し、改善策を立てるための柔軟な発想力や論理的な思考力が重要です。また、ターゲット層のニーズを的確に把握し、魅力的なプロモーションを企画するための市場調査力も必要です。
イベントの魅力をわかりやすく伝えるコミュニケーション能力や、トレンドを敏感にキャッチする感性をもつ人が向いています。
イベント業界の働きがい
イベント業界の働きがいについて紹介します。
イベントが形になる達成感を得られる
イベント業界では、企画から運営まで多くのプロセスを経て成果を形にする喜びがあります。
規模の大小に関わらず、関係者と連携し課題を乗り越えたあと、イベントが成功したときの達成感は大きいものです。参加者の満足そうな表情や、クライアントからの感謝の言葉は、業界全体で得られる働きがいのひとつといえるでしょう。
多様な人々との連携が生まれる
イベント業界では、多種多様な専門職やクライアントと協力する機会が多いです。会場設営のスタッフからアーティストまで、異なる背景やスキルをもつ人々と共に一つの目標に向かうことで充実感が得られるでしょう。
トレンドや文化を牽引できる
イベント業界は、社会のトレンドや文化を反映し、時にはそれを牽引する役割を担います。新しい技術や演出方法を取り入れ、新しさを追求することで、業界全体が活性化し続けることになります。
流行を作り出す一端を担えることは、業界に携わる人々にとって大きなモチベーションとなるでしょう。
地域や産業の活性化に貢献できる
イベント業界は、地域経済や関連産業への波及効果を生み出します。たとえば、大規模なイベントが地域の観光業を活性化させたり、展示会が新しいビジネスのきっかけを提供したりするなど、イベントを通じて社会や経済に貢献できるのも、この業界ならではの働きがいです。
イベント業界の課題
華やかで働きがいがある一方で、業界が抱える課題もあります。業界の課題やリスクを無視せず、それをどう克服できるかを考える必要があります。以下で課題を紹介します。
労働環境・働き方の改善
イベント業界では、夜間の作業や長時間労働が常態化していることが課題として挙げられます。とくに、会場設営や撤去のスケジュールがタイトであることが多く、現場の安全性の観点からも重要な課題です。
この問題を克服するために、一部の企業では働き方改革を進め、夜間作業の削減や設営・撤去時間の延長を提案する動きが見られます。また、ユニークな福利厚生や柔軟な勤務体制を導入し、従業員の満足度を向上させる取り組みも注目されています。業界全体で労働環境の改善に取り組むことで、従業員の満足度向上と業務効率化が期待されます。
人材不足の解消
イベント業界では、先の労働環境・働き方の課題に紐づいて人材不足も課題となっています。労働環境が改善されない状態が続くことで、優秀な人材が他業界に流出する可能性も高まってしまいます。
この課題を解決するためには、労働環境の改善とともに、イベント業界の魅力を発信し、職業としての認知度を高めることで、幅広い層からの人材獲得を目指す必要があります。
パンデミックなど外部要因の影響を受けやすい
イベント業界は、パンデミックや自然災害などの外部要因に大きく影響を受ける業界です。とくにコロナ禍では、多くのイベントが中止や延期を余儀なくされました。
しかし、これに対応するために、いち早くオンラインイベントやハイブリッド形式のイベントに移行した企業もあり、成功を収めています。今後も、環境の変化に柔軟に対応できる技術力や企画力をもつ企業が成長を続けるでしょう
イベント業界の将来性
イベント業界には課題がある一方で、技術の進化や新しい市場の台頭によって、これまで以上に多様なイベントが生まれる可能性を秘めています。以下で将来性について解説します。
AIによる技術革新がもたらす変化
AI技術は、イベントの演出や運営に変化をもたらしています。たとえば、AIを活用することで観客の感情を分析でき、イベント中でもリアルタイムで演出を最適なものに変更することができます。また、AIカメラを用いることで参加者データの収集と分析を行うことができ、次回のイベント企画やプロモーション戦略の向上に役立てることができます。
こうしたAIを活用した技術革新はさらに発展していくことが予想され、業界の未来の可能性を広げています。
オンラインイベントの広がり
コロナ禍で急速に普及したオンラインイベントは、地方や海外市場の進出を実現しています。これにより幅広い参加者を取り込むことができるようになり、イベントの規模や形式は発展しています。オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式も一般化し、参加者の多様なニーズに応える新しいスタイルが形成されています。
eスポーツ市場の成長
コンピューターゲームやビデオゲームを競技として行うeスポーツ市場は急成長しており、イベント業界に新たな可能性をもたらしています。オンラインとオフラインの両方で開催されるeスポーツイベントは、独自の運営ノウハウを必要とし、イベント業界にとって新しいビジネスチャンスとなっています。eスポーツは、若年層を中心に高い人気を誇り、今後も市場規模の拡大が見込まれるため、イベント業界の成長分野のひとつといえるでしょう。
成長分野でのキャリアの可能性
技術革新や市場の変化に伴い、イベント業界では従来以上に多種多様な職種が活躍できる新しい環境が生まれつつあります。たとえば、AIを活用したデータ分析を担う専門職や、オンラインイベントの運営に特化した役割など、成長分野に関連した職種は増加することが予想されます。これにより、従来のイベント運営にとどまらないキャリアが広がり、さまざまなスキルやバックグラウンドを持つ人材が参入しやすいといえるでしょう。こうした動きは業界全体の人材の裾野を広げ、さらなる発展を後押しする可能性があります。
まとめ
イベント業界は、参加者に特別な体験を提供しながらも、技術革新や社会の変化に柔軟に対応し続ける業界です。新たな成長分野の登場により、多様なスキルや職種が求められるようになり、キャリアの選択肢も広がりつつあります。
転職先としてイベント業界を検討する際には、業界が抱える課題を理解したうえで、自分のスキルや目指す職種を考えることが重要です。変化と発展を続けるイベント業界は挑戦しがいのある分野といえるでしょう。
本記事を参考に、業界への理解を深め、自分に合った職種や働き方を見つけてみてください。
関連記事
毎月文化祭・運動会が複数あるようなもの。
